巨人6位・山本一輝は杉内俊哉二世。メジャー平均を凌駕する驚きの数値

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

 今秋のドラフトで巨人から6位指名を受けた中京大の左腕・山本一輝(いつき)のピッチングを初めて見たのは、一昨年の6月の全日本大学野球選手権だった。

 毎年、野球部員が200人前後になる大所帯の中京大で、2年生からマウンドに上がるぐらいだから、かなりの実力者なのだろうと思った。しかも、山本の出身校が東郷高校(愛知)という野球界においてはまったくの"無名校"であることも興味をひかれた理由だった。

 なにより、実戦のピッチングを見て、興味は最高潮に達した。若いサウスポーにありがちなぎこちない身のこなしやアンバランスさがまったくない。それどころか、気持ちよさそうに腕を振り、打者寄りのギリギリのところでリリースできるから、ベース付近でも勢いが衰えない。

巨人3位指名の中京大中京・中山礼都(写真左)と6位指名の山本一輝巨人3位指名の中京大中京・中山礼都(写真左)と6位指名の山本一輝 球速が出やすいと言われる神宮球場のスピードガンで140キロ台前半でも、打者の差し込まれ具合は間違いなく140キロ台後半である。いわゆる「体感スピード」で勝負できる生きた球質を持った逸材だと、リストのなかに「中京大・山本一輝」の名がしっかりと刻まれた。

「たしかにそうですね。山本は(打者が)わかっていてもなかなかアジャストできない真っすぐを投げられるのが、最大の持ち味ですね」

 中京大の半田卓也監督は体育学部の教員も務めており、野球へのアプローチも合理的かつ科学的でとても勉強になる。

 その半田監督から野球用語としての「エクステンション」という言葉を初めて教わった。エクステンションとは、ボールリリース時のピッチャープレートからリリース位置までの距離のことで、投手がどれだけ打者寄りでボールを離したかを表す数値だという。

「中京大の投手たちの平均が1m 70から80cmなんですが、山本は2m3cmもあるんです。ちなみに、メジャーの平均が1m 90cm弱らしいんです」

 バッテリー間は18m 44cmだから、山本は16m40cmぐらいに距離を縮めて投げていることになる。

「しかも山本はテイクバックからリリースの直前まで、左手に持ったボールを体の向こう側に完全に隠せるんです。だから、リリースがすごく見えづらいし、バッターはタイミングを取るのが大変だと思いますよ」

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