大久保博元と川崎憲次郎で意見の相違。セ・リーグはDH制を導入すべきか (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

 セ・リーグでもDH制を導入すべきかどうかという議論は、今に始まったものではない。反対派の声として根強いのが、「采配」面だ。セ・リーグでは投手が打順に入ることで"代打の神様"や若手の"お試し枠"が生まれ、それが育成につながるという意見もある。

 だが大久保氏は、2015年に楽天を率いた"監督目線"で一刀両断する。

「一軍で"お試し"なんてするなという話です。ファームでやっておけばいい。そもそもスタメン9人全員が、調子がいいわけがありません。歴史上、9人全員が打率3割を打ったチームはないですから。DH制でも、代打を出せる場所は絶対に出てくる」

 起用の幅を考えると、指名打者制のほうが大きい。たとえば2020年の日本ハムでは中田を主に指名打者で起用し、若手の清宮幸太郎にファーストを守らせた。近藤健介や西川遥輝をDHで起用し、守備の負担を減らした試合もある。

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 対してDH制を敷かないことのデメリットは、打力の低い捕手を使いにくい点だ。8、9番に"打てない打者"が続く打線は、投手として「圧倒的に楽」と川崎氏は語る。

「ピッチャーが打席に入ると、『打たれてはいけない』『当ててはいけない』というのはもちろんあるけど、やっぱり8、9番の打席は気持ち的に抜けます。『7番まで打ち取ればいい』と考えられるので、精神的にも大きい」

 では、セ・リーグもDH制を採用すべきか。大久保氏は大きく頷いた。

「パ・リーグに追いつくのに何十年かかるかわからないけど、DH制を導入することで野手の競争も激しくなります。そうすれば、何とか抑えようとしてピッチャーも育っていく」

 指名打者制が選手のレベルアップにつながることは、川崎氏も同意見だった。ただし、導入すべきかとなると、答えは別になる。

「DH制にはパ・リーグらしさを感じます。ある意味、ピッチャーもバッティングするのは楽しいですし。セ・リーグの文化として残しておいてもいいのかなと思います」

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