破壊力抜群1985年のタイガース打線。八重樫幸雄がとった掛布・岡田対策は? (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

【猛虎フィーバーは本当にすごかった】

――1985年に阪神がセ・リーグ優勝を決めたのは神宮球場のヤクルト戦でした。このときのことはご記憶にありますか?

八重樫 あの日のことはよく覚えています。その前に、この年の"猛虎フィーバー"が過熱していくにつれて、神宮球場周辺にも「大阪ナンバー」の車がすごく多くなっていくことに気づいていたんだよね。しかも、運転席でみんな鉢巻きしている(笑)。そもそも気合いの入り方が違っていたから、優勝を決めたゲームも試合が始まるときには球場が真っ黄色だったでしょう。

――21年ぶりの優勝ということで、確かにみんな盛り上がっていたし、正直なところ神宮球場での試合もヤクルトファンよりも阪神ファンの方が多かったし、元気でしたね。

八重樫 プレーしていても、レフトスタンドからの声援が地鳴りのように響いてくるんですよ。優勝を決めた試合では球場が揺れた感じがしたな。レフト、三塁側を中心にしてグワーッと揺れた気がしたんだよ。

――相当、強烈なヤジも飛んだんじゃないですか?

八重樫 ヤジは多かったね。「コラ、ええ加減にしろ。この回はタイガースが逆転じゃ!」って言われて、「あっそ」と返したこともあった。こちらが冷静であればあるほど、彼らはカッカするんだよ。それを見るのがおかしかったな。もっと強烈なヤジの場合は「うるせぇ、この野郎!」って、こっちも怒鳴り返したね(笑)。

――穏やかで優しそうな若松勉さんなら言い返せなさそうなので、代わりに八重樫さんが言い返したんですか?

八重樫 若松さんって大人しそうに見えるでしょ。でも、いざ試合が始まって、強烈なヤジを言われたら、さすがの若松さんも「黙ってろ!」って怒鳴ってたよ。ああ見えて気が強いんです。そうでなければ、あれだけ小さな体で一流の打者にはなれないんじゃないのかな。意外でしょ?(笑)

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