「森・野村」のハイブリッド野球で優勝。辻発彦と渡辺久信が両監督から学んだこと (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

【渡辺久信「野村さんは言葉で納得させてくれる監督」】

2008年から2013年まで西武の監督を務め、現在はGMを務める渡辺 photo by Hasegawa Shoichi2008年から2013年まで西武の監督を務め、現在はGMを務める渡辺 photo by Hasegawa Shoichi「森監督は選手の性格をよく把握されている監督でした。僕とか工藤(公康)さんはボロカスに怒られましたよ。それは、『コイツなら叱っても大丈夫だろう』と見極めていたからです。でも、『コイツは叱ってはダメだ』という選手には何も言わなかった。おだてたり、叱ったり、選手ごとに対応の仕方を変えることができる監督でした」

 そう森監督の印象について語る渡辺に、今度は「野村評」を聞いた。

「野村さんと森さんは、よく『似た者同士だ』と言われるけど、両チームでプレーした自分から見たら、全然別の監督ですよ。野村さんはしっかりと言葉で納得させてくれる監督でした。カウント別の投手心理、打者心理をきちんと言葉で説明してくれました。僕だってプロ野球選手だから、ある程度は理解していますよ。でも、あらためて言葉で説明されると、『あぁ、この人すごいな』って素直に思えましたね」

 続いて、辻に森監督、野村監督についての印象を尋ねてみた。

「森さんは勝負に対してはとても厳しい半面、選手に対する気配りが上手な監督でした。どういう環境だと選手が野球に集中できるのか、気持ちよくプレーできるのかを常に考え、それを実行してくれました」

ある試合のサヨナラのチャンスで、辻はバントを失敗する。結果的にチームはサヨナラ勝ちをしたものの、彼は「もしも負けていたら、取り返しのつかないことになっていた......」と恐怖心を抱いていた。するとその夜、森監督から辻に電話が入る。

「お前のおかげで何試合勝たせてもらったと思っている。たとえ今日負けたとしても、お前に文句をいうヤツは誰もいないぞ」

「監督からのひと言で一気に気がラクになりました。当時の西武があれだけの結束力を誇っていたのは、森さんの下にいたからこそだと、僕は今でも思っています」(辻)

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