日本シリーズ初戦、冷静さ欠いた
巨人バッテリーの栗原への配球を分析

  • 田口元義●text by Taguci Genki
  • photo by Sankei Visual

 案の定、このちょっとした隙を栗原に突かれてしまいました。それまでの2打席と違って、今度は3球連続で外角を攻めたものの、4球目に同じ外角のボールを左中間に運ばれ、2点を失った。栗原は外野などでの出場が多いですが、本来はキャッチャーです。ここまで偏ったリードで攻められれば、狙い球を絞れます。巨人はこの試合、一番の勝負どころで流れを変えるどころか、さらに相手を乗せてしまったのです。

 その点、ソフトバンクのバッテリーは、我慢強く相手打線と対峙していました。初回から巨人のバッターたちに得意の"おばけフォーク"を見極められ、ストレートも積極的に打ちに来られた。3回までに50球を超えるなど、苦しいピッチングだったと思います。

 しかし、バッテリーを組む甲斐(拓也)が辛抱強くリードしていた。相手バッターの雰囲気やスイングなどから1球1球コースや球種を変えたり、緩急を使ったり臨機応変に対応しました。

 最大のピンチとなった4回。3番・坂本、4番・岡本(和真)にボールを見極められ、連続四球でノーアウト一、二塁。長打が出れば同点、一発ならば逆転のピンチでバッターは5番の丸(佳浩)。ここでも2球連続フォークを見逃され不利なカウントとなりましたが、3球目のアウトコースのストレートでゲッツーに打ち取った。

 インコースで詰まらせようと欲を出すのではなく、「長打警戒。レフト前の単打で満塁でもOK」という意識で、外角ストレートで攻めたことが最高の結果を生んだ。試合を通して、ソフトバンクのバッテリーは、巨人より一枚も二枚も上手でした。

栗原陵矢がブレイクまでに6年を要した理由>>

 ソフトバンクは9回に1点を与えてしまいましたが、千賀からモイネロ、森(唯斗)の盤石リレーで勝利できたことは大きい。「うちはシーズンどおりの戦いをするよ」という意思表示ができたことで、次戦以降もブレずに戦うことができるでしょう。

 一方、巨人はエース・菅野で敗れ、さらに眠っていた栗原を目覚めさせるなど、あまりに痛い敗戦となりました。

 第2戦に先発する今村(信貴)はイニングに関係なく1球1球集中し、悪い流れを断ち切るくらいの気概を見せてほしいですね。それぐらいのピッチングをしないとソフトバンクの勢いは止められないと思います。

秦真司プロフィール
1962年徳島県生まれ。法政大から1984年ドラフト2位でヤクルトに入団。捕手、外野手として90年代のヤクルト黄金期を支える。その後、日本ハム、ロッテでもプレーし、38歳で現役を引退。引退後はロッテ、巨人などでコーチを務め、現在は解説者として活躍。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る