今季唯一のドラ1高校生野手の育て方。監督が語る具体的練習と井上朋也の未来 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 自身を中距離打者と捉える井上の言葉を紐解くと、"中・長距離"打者の系譜を受け継いでいく可能性を十分に感じられる。

「ホームランはあまり意識していないですけど、打席ではホームランが一番いい結果だと思っているので、最終的にはたくさん打てたらと思います」

 強いスイングでボールにコンタクトすることを心がけた結果、打球がフェンスを越えていく。そうした意識を持って打席に立つことで、打率と本塁打の両立を目指すことができる。井上は181cm、86kgと恵まれた身体を誇り、これから鍛えていけば、打者としてのスケールは自然とアップしていくだろう。

 井上の魅力のひとつが、右バッターである点だ。球界全体を見渡しても、右のスラッガーは決して多くない。とくにパ・リーグでは柳田悠岐(ソフトバンク)、吉田正尚(オリックス)を筆頭に、左の強打者が目立っている。

 今季3年ぶりのリーグ制覇を飾ったソフトバンクにとって、右でロングを打てる打者は補強ポイントだった。2011年にFAで加わりチームを牽引してきた内川聖一は、今季限りでの退団が決定。松田宣浩も37歳になり、今年は打率.227、12本塁打(11月2日時点)と全盛期からパフォーマンスを大きく落としている。

 世代交代----。

 孫正義オーナーから常勝を使命とされるソフトバンクにとって、血の入れ替えは不可欠だ。その一番手として、今年の「運命の日」に呼ばれたのが、井上の名前だった。

 全国に好素材の高校生はたくさんいるなか、1位指名される選手は限られている。なぜ、井上は大きく飛躍できたのだろうか。

「昨年くらいから彼自身がプロ野球を意識し始めて、ポジションも変わったり、努力をしてきました」

 秘められたポテンシャルを引き出すべく、井上が2年生の秋、岩井監督はライトからサードに転向させた。そして昨年12月、主将に抜擢。内面の成長を引き出し、選手として飛躍させるためだった。

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