ノーヒット・ノーラン、2ケタ勝利...ヤクルト小川泰弘、再飛躍の理由 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 昨年も5勝12敗と大きく負け越し、防御率4.57と不甲斐ないピッチングが続いた。ではなぜ、今年は真っすぐがよくなったのか。小川は「去年から(取り組みを)ガラッと変えました」と言った。

「ちょっとずついろいろ変えて、それがいい方向にいっているのかなと思っています。トレーニングも変えましたし、フォームも変えましたし、考え方も変えました。それにグラブやスパイクはカラーリング、重さ、メーカーも変えさせていただいたことでフィーリングがちょっと変わった気がします。グラブはちょっと軽くなって、自分の投げたいフォームをイメージしやすくなったというか、そういう風につくっていただきました」

 そうした小さな変化の積み重ねが、いつしか大きな結果をもたらす。小川の取り組みを見ていた者にとっては、そういう発想もあるのかと感心させられた。これまで課題としていた"投球テンポ"も変えたようで、小川は「ようやく形になりつつあります」と言った。

「テンポよく抑えて、すぐに打線が爆発したという試合が多かったですし、今でもそこは意識しています。テンポを上げることで(自分も)受け身ではなく攻める姿勢になれるので、ストライク先行で攻められるというか......勝負のなかで、ボール先行がストライク先行になるのは大きいので、(去年までと比べると)その違いもあると思います」

 高津臣吾監督は小川のことを一軍投手コーチ時代から見ており、小さな変化を積み重ねてきたことについて聞くと、こんな話をしてくれた。

「野球選手って"変化"に対して意外と臆病なんですよ。野球道具もそうだし、ピッチャーならプレートの位置を少しずらすだけでも悩みます。でも小川は『これを試してみたら』とアドバイスすれば、すぐにトライできる。変化することへの勇気があり、発想の転換など、すごくうまい選手だと思います。

 グラブが変わったからといって、ピッチングが大きく変わることはないと思います。それでも、小さなことでも思いついて『ちょっとでも』という気持ちはすごく大事。まったく違うことに目をつけるのは難しいですし、変化を恐れずにトライしたことが、今年のピッチングに現れていると思います」

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