松井秀喜から「ありがとう」。五十嵐亮太は全球ストレートを投じた

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【「僕、キムタクさんに似てますか?」と笑った】

 今季限りで23年間の現役生活に幕を閉じることになったヤクルトの五十嵐亮太に、一度だけインタビューしたことがある。古い手帳を引っ張り出して確認してみると、それは2000(平成12)年の5月。プロ入り3年目の五十嵐が自身初の開幕一軍を勝ち取り、4月だけで3勝1敗と一躍注目を集めていた頃のことだった。

「160キロを出すことと三振にはこだわりがあります。去年までは『打たれたらどうしよう。投げたくないなぁ』と思っていたけど、『今年はもっとオレに投げさせてくれ、絶対に抑えて勝ってやるから』と思えるようになりました」

160キロ近い速球で多くの名勝負を演じた五十嵐160キロ近い速球で多くの名勝負を演じた五十嵐 間もなく21歳を迎えようとしていた若者の言葉は勇ましかった。この年は快進撃が続き、前半戦だけで11勝を記録。そのすべてが中継ぎでマークしたもので、"勝ち運を持っている"というのも五十嵐の特徴だった。ソフトバンクからヤクルトに復帰した昨季も、開幕直後の4月にリリーフ登板だけで5つの白星を記録するなど、その勝ち運は健在だった。

 そして、2000年当時に話題となっていた「キムタク(木村拓哉)似」と言われることを本人はどう思っているのか尋ねてみると、白い歯をこぼして破顔一笑した。

「そうなんですよ、いつも『キムタクさんに似てるね』って言われるんです。でも、似てますか? 似てないですよね。絶対にみんな口には出さないけど、直接僕と会った時には『どこがキムタクに似ているんだよ。調子に乗ってんじゃねぇよ』って、内心で思っているはず。面と向かっては言わないけど、絶対にそう思っているはずなんです(笑)」

 その笑顔は、まさにキムタクにそっくりだった。そう告げると、「そんなこと言われると調子に乗っちゃうじゃないですか」とケラケラと笑った。天性の華やかさが、この時点ですでに備わっていたことが印象的だった。

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