澤村拓一が見せる投球術の「悪い顔」。元巨人コーチが語る移籍後の変化 (2ページ目)

  • 佐々木享●文 text by Sasaki Toru
  • photo by Sankei Visual

 現状、ロッテに移籍して三振を取っているのは、ストレートと同じ軌道でタテに鋭く落ちるスプリット。確実に空振りが奪える球種が増えたことでピッチングの幅が広がり、組み立てができるようになりました。

 それに、ここ数年いい結果を出せなかったのは、相手チームが澤村を十分研究していることも大きな要因だったと思います。もともと球種が多いピッチャーではなく、しかも困ったらストレートいうピッチャーですので、相手にしてみれば絞りやすい。

 また私自身、広島から巨人に移籍して感じたことですが、巨人というチームは優勝を義務づけられたチームであり、常に高い要求をされます。そういう環境で、期待に応えたいという気持ちは誰よりも強かったと思うのですが、柔軟に対応することができずに苦しんだ一面はあったと思います。

 それがロッテに移籍して、ある意味プレッシャーから解放され、自分本来のピッチングができるようになったのかもしれません。気持ちよく腕を振っているように思えますし、ボール自体も全盛期の勢いを取り戻したような気がします。そういう意味で、澤村にとってはいいトレードだったと思います。

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 とはいえ、本当の勝負はこれからだと思います。今はパ・リーグの打者が澤村のスプリットに手を焼いている状況ですが、データが集まり、傾向がわかってくると、今のようなピッチングができるとは限りません。

 現状はストレートとスプリットが中心ですが、対応された時にどのようなピッチングをしていくのか。もうワンランク、ピッチングの質を上げていく必要はあるでしょう。とくに巨人時代に課題だった粘られてからのピッチングをどうするのか。そこはすごく楽しみにしているところです。

 これまでは150キロを超すストレートを武器にしてきましたが、そうしたパワーピッチングのなかで緩急をつけられるようになれば、さらなる活躍が期待できます。たとえば、カーブやナックルカーブなど、110キロ台のボールが1球でも加われば、彼のピッチングはさらにパワーアップすると思います。

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