2020.09.28

3試合連続サヨナラ本塁打を食らった男。
「もう取り憑いちゃったね」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 なんともあっさりとした物言いだった。セーブ制度の導入を望んだ半面、「抑えの切り札」への強いこだわりはなく、じつは先発を望んでいたとは。

「今と違ってね、まだ先発のほうが給料よかったこともあった。また南海という球団はケチだったし。ましてオレの場合、最初からリリーフだから、給料、全然上がってない。タイトル獲ると上がるんだけど、オレ、1年置きだから上がって下がって上がって下がってだもん。ははっ。そうでしょ? 1年置きだよね?」

 佐藤さんはそう言うと、おもむろに僕の取材メモを手に取り、視線を落とした。A4の用紙2枚にプリントしたメモには各年の記録に加えてエピソード、質問事項を記してある。しばらく空調の音だけが聞こえていた。

「73年に優勝したんだっけ? 確かこの73年ね、オレ、3試合連続サヨナラホームラン打たれてんだけど、後半で4連勝してんだよね」

 沈黙が破られ、最も聞きたいけれど最も切り出しにくい話が、ご当人の口から出てきた。僕はとっさに、長池徳士さんに会って聞いた3本目のサヨナラホームランの話を持ち出した。唯一、右方向を狙って打った1本、ということを伝えると、佐藤さんは目を見開いた。

「狙ってたって言ってたあ? 違うよ、あっち向いてホイだったんだから。顔はレフト向いて、ライトポールに当たってんだからね。今でも憶えてるけど、ファウルと思ったヤツが当たっちゃったんだから」

 途端に勢いづいた口調。悔しさがありありと出ているように思う。

「ロッテ戦の1本目だってね、ツーアウトから右中間にフライが上がって、イージーフライ。よし、終わり、と思ってマウンドを降りていくとき、ワーッていうから何かな? と思えば、お見合いして二塁打になったの。

 それでカーッとなったら野村さんが来て、『ツーアウトだから、ミチ、な?』って言ってくれたんだけど、次、フォアボール。で、代打の榊(親一)さんに逆転サヨナラ3ラン。ナニあんなとこでお見合いしてんだと思ってさあ。マウンドに来た野村さんと握手しようと思ってたんだよ、こっちは」