「ダルビッシュ2世」ブームは下火。全国各地にいた選手たちのその後 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 2011〜2012年といえば、ダルビッシュがNPBの日本ハムからMLBのレンジャーズへと籍を移す端境期だった。NPBでプレーした最後の年である2011年、ダルビッシュはこんな超人的な成績をマークしている。

28試合18勝6敗 232回156安打276三振42四死球 防御率1.44

 そもそも、野球界では190センチを超えるような高身長の選手は、動作がぎこちなく、故障しがちで大成しないケースが目立っていた。身長196センチのダルビッシュが日本を代表する投手に君臨し、あとを追うように高身長の投手が続出したことで「●●のダルビッシュ」となぞらえるような異名が流行したのだろう。

 かくいう筆者も、高校1年生だった大谷を初めて目撃した2010年10月8日に、Twitter上で大谷について「球界の宝であるダルビッシュのような投手になってほしい」とツイートしている。

メジャースカウトが受けた「高校1年・大谷翔平」の衝撃>>

 その後、大谷や藤浪がプロで大活躍したことや、190センチを超える高身長の逸材が珍しくなくなったこともあり、今では「●●のダルビッシュ」や「ダルビッシュ2世」の異名は下火になっている。

 今年のドラフト候補では、身長191センチの大型右腕・シャピロマシュー一郎(國學院栃木)という未完の大器が出現したが、ダルビッシュになぞらえる報道は目にしなかった。

 そしてついには、身長200センチの秋広優人(二松学舎大付)や今西拓弥(早稲田大)という超大型ドラフト候補まで登場。

 これまで身長2メートルに達した日本人選手は、巨人に在籍した馬場正平(ジャイアント馬場)だけと言われている。秋広は打者としてもスカウト陣に評価され、今西は左腕ということもあって「ダルビッシュ」の冠をつけた報道は今のところ見かけない。

 高身長の選手は自分の体を操作するのが難しい----。そんな球界の常識を破り、ダイナミックなパフォーマンスでファンを熱狂させてきたダルビッシュ有。「ダルビッシュ2世」「●●のダルビッシュ」という異名は当人にしてみれば迷惑だったに違いないが、今となっては先駆者としての勲章のようにも思える。

 ダルビッシュたち高身長の先人が踏み固めた道を、さらなるスケールの持ち主が悠然と歩いていく。そうやって野球界はさらに発展していくのだろう。

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