ヤクルトのセ・リーグトップの数字は高津監督の「信念」の表われだ (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 だが8月、成長過程のチームの課題が徐々にあらわとなった。7勝17敗1分けと大きく負け越し、8月26日の巨人戦では投手陣が20本ものヒットを献上した。結局、シーズンの半分となる60試合を消化した時点で24勝31敗5分け。なかでもチーム防御率は4.76と大きな問題を抱えている。

 とはいえ、暗い話題ばかりでもない。4番・村上宗隆の驚異的な成長と、8月15日のDeNA戦では小川泰弘がノーヒット・ノーランの快挙を達成。昨年5勝12敗と苦しんだ右腕はここまで7勝2敗と奮闘している。小川は言う。

「(ノーヒット・ノーランを達成した)あの試合でいえば、チームは5連敗中だったので、勝ち切るという意味ではひとつ流れを変えられた部分はあると思います。勝ち方やピッチング内容、相手打者への攻め方は、次の先発投手やチーム全体に影響すると思うので大事にしていきたいですね」

 高津監督は就任時から選手たちに「いいことも悪いこともたくさん経験して、少しずつ成長していってほしい」と言い続けている。

「昨年、チームは大きな失敗を経験しているので、そこが基礎であり基盤ですよね。プレーする前にミスを怖がってほしくないし、投げる前に打たれるイメージをしてほしくないし、打席に入る前に打ち取られることを考えてほしくない。試合前に負けるイメージを絶対にしてほしくないと、ずっと思っています」

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 8月25日、神宮球場での巨人戦。2対8と大きくリードされた9回裏、一死後に青木宣親のソロで1点を返すと、次打者の村上はセンター前に強烈なヒットを放ち出塁。この時、村上が見せた気迫は、点差を感じさせないすごいものだった。

「一方的なゲームになってしまったのですが、青木のホームランで『ん?』という雰囲気になって、そのあとのムネ(村上)が出塁したことで、相手の抑え投手を引っ張り出すことができた。ゲームをあきらめないこと、次の塁へ、次の1点へという、ずっと言い続けてきたことはできたのかなと。結局は負けてしまったのですが、そういう思いはみんな出ていると感じています」

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