「アライバプレー」誕生秘話。2人がアイコンタクトで演じていた離れ業 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 寺崎江月●協力 cooperation by Terasaki Egetsu

荒木「僕、いつも取材で『井端さんが次の打順にいるから思い切っていけた』という話をしていたんです。ご存じの通り、僕は初球から狙い球が来れば打ちにいくタイプで、初球であっけなく凡退すると『先輩、頼みます』と祈るしかなかったですから」

井端「2人で足して、ちょうどいい感じを保っていればいいだけの話。俺はずっとそう思っていた。荒木と俺のふたりで調和がとれていればいいと。逆に荒木が粘ってくれて、2番の俺がいきやすい環境を作ってくれたこともあったし」

荒木「そうですか」

井端「そういう時は、『たまにはこっちも初球をかまさないと』と、初球から攻めていけた。もしくは荒木が初球を打ったあとでも、相手バッテリーが『井端は初球を見逃すだろう』と簡単に投げてきたボールを狙って打つこともあったし」

荒木「そうでしたね。ヒットを打つことが一番のダメージになりますからね」

井端「理想を言えば、2人で20~30球を投げさせて、どちらも塁に出て、先発ピッチャーを5回持たずしてマウンドから引きずり降ろせるならそれがいい。すべての試合でそういうわけにはいかないけど、『2人の間でうまく調和がとれていればいいのかな』と思ってやってきた」

 キーワードは「調和」だった。一時、「1番・井端、2番・荒木」の組み合わせを試された時期もあったが、うまく噛み合わなかった。荒木がアグレッシブに打ちにいき、井端は調和を取りつつクリーンアップにつなぐ。こう書くと井端への負担が大きいように感じられるが、井端は「不満はなかった」と語る。

「2番は制約が多くて窮屈なバッティングをすることも多かったけど、不満はなかった。進塁打で打率が下がっても、逆にヒットエンドランを成功させて打率が上がることだってある。俺のような打者が全打席、普通に打っていたら、高打率は残せなかったかもしれないから」

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