「アライバ」不仲説の答え合わせ。
対談で明かしたふたりの奇妙な関係

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 寺崎江月●協力 cooperation by Terasaki Egetsu

 当時のいきさつを井端に尋ねると、「荒木は優柔不断というか、何もしない男だったので......」と語り始めた。

「お互いにそろそろ寮を出ないといけないタイミングなのに、荒木は次に住む家さえ決めてないんです。僕が引っ越しの準備をしていると荒木が部屋に来て『井端さん、家はどこにしたんですか?』と聞いてきて。僕は新築で家賃も手頃なマンションを見つけていたので教えたら、荒木は『まだ空いてますかね?』と聞いてくる。『空いてるんじゃねぇか?』と確認したら空室があったんです。『じゃあそこへ行きます』と、僕と同じマンションに住むことになったんです」

 同じマンションに住むようになってから、すでにショートのレギュラーを奪っていた井端に続き、荒木もセカンドの定位置を確保。それからは公私にわたって時間を共に過ごすことが増えたのだった。

 対談中、お互いにプレーヤーとしての長所について語ってもらったところ、それぞれこんな回答があった。

荒木「井端さんは、頭の中で考えたことをそのまま再現する能力がすごいんですよね。プレーに対して、ちゃんと準備ができている。勢いでプレーする僕には足りない部分でした」

井端「僕は荒木の圧倒的なスピードには敵わない。これだけのハイスピードで打球に飛び込んだり、ベースランニングしたり......という部分では、当時のプロ野球で右に出る者はいなかった。それは正直、『うらやましい』のひと言だった」

 身長もプレースタイルも性格も異なるふたり。なぜアライバは球史に残るコンビになりえたのか。そこには人智を超えた世界が広がっていた。

(敬称略/後編につづく>>)

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