2020.08.16

「アライバ」不仲説の答え合わせ。
対談で明かしたふたりの奇妙な関係

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 寺崎江月●協力 cooperation by Terasaki Egetsu

◆中日ベストナイン。即決だった星野仙一のすごさ>>

 直前まで別件の仕事で体を動かしていた井端は、髪型が少し乱れていた。井端は荒木に「(ヘア)ワックス持ってない?」と尋ね、荒木が持っていないことを知ると、会議室から出ていった。

 しばらくして髪型を整え、会議室に戻ってきた井端はこともなげに「トイレの水でやってきた」と荒木に伝えた。荒木が目を丸くして、「それでいいの?」と言いたげな表情を見せると、一座に笑いが広がった。

 何気ないやりとりだったが、この時点で筆者は対談がうまくいく予感がしていた。そして、以前に井端が荒木について語った言葉を思い出した。

「夫婦って、付き合っている時は会話があるし楽しいけれど、夫婦になると自然と会話が減っていくじゃないですか。それでも、お互いに何を考えていて、どうしてほしいかはなんとなく通じ合っているもの。夫の仕草ひとつで、妻がお茶を出す。僕と荒木はそれに近い関係だったような気がします」

 荒木はこれまで自著を含め、アライバ関連の企画を基本的に断ってきた。だが、今回の共著を承諾した理由は、発端が井端の提案だったからだという。

「いつか現役を引退したら、お互いに当時の答え合わせをするような機会がくるだろうと予感していました。井端さんから声をかけていただいたので、『ぜひやらせてください!』とお答えしました」

 井端が旧知の出版社のスタッフとの雑談中に「荒木と何かやりますか」と語り、書籍企画がトントン拍子に進んでいったのだった。

現役時代を振り返る「アライバ」の2人 photo by Ishikawa Kohzo アライバコンビの会話が減ったのは、ベテランのお笑いコンビが楽屋で口をきかないことにも似ているかもしれない。

 荒木は「若手時代は、周りから『お前ら、そんなにしゃべっていて大丈夫か?』と言われるくらい話していたような記憶がある」と、井端との会話があったことを認めている。何しろ、ふたりが同時に中日の選手寮を退寮した際には、同じマンションに転居しているくらいなのだ。