心技体が崩れていった多和田真三郎。
類まれなる才能を持つ18番の復活に期待

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 この配球が、実に多和田らしかった。

「2球目にインコースに行くのは嫌だったので、首を振りました。詰まった当たりが野手の間に落ちて1点というのが一番嫌だなと自分の頭にあったけど、それでも(捕手の森)友哉がインコースのサインを出したので、これは行くしかないなと」

 昭和の時代、プロ野球のエースには"お山の大将"タイプが多かったと言われる。対して平成生まれの多和田は、そうした一面をまるで感じさせない。むしろ沖縄生まれのイメージどおり、のんびりした性格だ。そんな男は強気な森に引っ張られ、腹をくくって内角に投げ切った。

 プラスとマイナスが引き合うように、多和田と森は名バッテリーになっていくかもしれない----。

 そんな淡い期待は、観察者の希望的観測にすぎなかった。

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 翌週、4月19日のソフトバンク戦は7回途中2失点で敗戦。3回に二死から四球を出すと、3連打で2点を奪われた。「山賊打線」は相手先発の千賀滉大に8回までわずか2安打に封じられ、完封負けを喫した。

「(開幕戦が行なわれた)金曜に投げると、どうしても相手のエースと当たります。去年は(菊池)雄星さんがいて、自分が(2番手以降で)投げている立場では全然苦労もわからなかったです。このなかでいかに勝っていくかが、今後、自分の成長するところだと思います」

 この年の多和田は、決め球のスライダーとフォークをうまく操れないという問題を抱えていた。それでも何とか粘って試合をつくっていたが、勝ち星に恵まれず、迷宮に迷い込む。3回に打たれた不運な同点タイムリーを含め、6回途中4失点で降板した5月4日の楽天戦の翌日には、こう吐露している。

「フォーム的に崩れてきているので、変化球のコントロールがちょっとずつズレてきている。真っすぐも思ったところに決まり切っていないので、苦しくなっています」

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