無傷の6連勝。楽天・涌井秀章「V字回復」の理由を斉藤和巳が解説 (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Kyodo News

 それに加え、豊富な経験。試合の状況を把握しながら、1球1球に意図が感じられます。投球に意図があるからこそ、簡単に試合の流れを相手に渡さない。バッテリーを組む太田光も配球を組み立てやすいでしょうし、すごく勉強になっている部分もあるんじゃないかと思います。

 テンポよく投げているので、野手も守備のリズムをつくりやすいですし、ベンチも継投のタイミングを計りやすい。涌井の存在がいい歯車となって、チームを円滑にまわしているのではないでしょうか。

 あともうひとつ。これはあくまでも仮説ではあるのですが、前所属のロッテの本拠地であるZOZOマリンスタジアムよりも、今の楽天生命パークのほうが投げやすいのかもしれません。

 というのも過去2年のデータを見ると、ZOZOマリンよりも楽天生命パークのほうが、数字はいいんです。

 僕も現役時代に投げているのでわかるのですが、ZOZOマリンは非常に難しい球場です。マウンドの後方から吹いてくる風。さらに上空には不規則な風が舞っています。そのせいで変化球の曲がりが変わってくることが結構あるんですよ。変化球の曲がりを修正しようとして小手先でコントロールしようとすると、どんどん制球が狂っていってしまう。

 慣れもあるのでしょうが、普段以上に神経を使う球場であることは間違いないです。ワインドアップで足を上げるだけで風であおられてバランスを崩すことがありましたからね。まあ本人はそんなこと絶対に口にしないでしょうが、僕の経験上、もしかしたらそういったことがあるのかもしれません。

 今後、シーズンは中盤から終盤にかかってきます。楽天は涌井以外にも則本(昂大)がいますし、また岸(孝之)も戻ってきます。打線の調子がいいとはいえ、いつもまでも打ちつづけられるわけではありませんし、必ず落ちるときは来ますから、そういったときに涌井を中心としたピッチャー陣がどこまで頑張れるか。

 とくに涌井は体が丈夫でケガが少なく、かつイニングを稼いでくれる。苦しいとき、そういった仕事のできるピッチャーがいるのはベンチとしてはありがたい。

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