ヤクルト山崎晃大朗に「二軍に落ちるぞ」。石井琢朗が2年前に伝えたこと (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 この年、山崎は開幕一軍を果たすが、直後に二軍降格。それでも二軍でたしかな実績を残して、7月1日に再昇格を果たした。

「一軍では考えすぎて、崩れてしまった部分がありました。そのなかで、二軍ではまずは『しっかりと打つこと』を課題として取り組んでやってきました」

 その言葉と表情からは、たくましさが伝わってきた。だが試合前の練習で、石井コーチとのティー打撃が始まると、予想外の展開が待っていた。

「ファームでは何をやってきた? 見逃し三振は減った?」

「はい。減りました」

 久しぶりの再会に会話が弾むと思いきや、重い空気が流れ始めた。石井コーチはトスを上げる手を休め、山崎に聞かせるようにゆっくり話しはじめた。

「ファームで結果を出すことはもちろん大事だけど、ファームの投手に対して、三振を怖がって初球から打ちにいっての結果はどうかと思う。極端に言えば、ファームでは自分から追い込まれた状況をつくって、そこで結果を出せば自信になるんじゃないかな。そうでなければ、一軍ではまた簡単に2ストライクに追い込まれる。それが課題だったわけだろ。下で、ただ結果を出しただけなのであれば、一軍では打てずに、また二軍に落ちるよ」

 結局、このシーズンは23試合の出場にとどまり、打率も.184と低調に終わる。しかし、スイングは目に見えて速くなり、打球も強さを増し、飛距離の伸びも一目瞭然だった。

 シーズン終了後の松山(愛媛)での秋季キャンプで、山崎は来季に向けて覚悟の言葉を口にした。

「今年一軍で戦力になれなかったことを考えれば、練習がしんどいとか言っていられません。オフも休んでいる暇はないですし、野球から離れる時間はないと思っています」

 特打では、逆方向の打球がスタンドに飛び込むなど、さらなるパンチ力を身につけていった。

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