石川柊太の魔球「パワーカーブ」が結ぶ、伊藤智仁、ダルビッシュとの縁 (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Koike Yoshihiro

 投手コーチが「オマエにしか投げられない球だ」と言えば、捕手の甲斐拓也も「ほかの投手とはまったく違う独特なボール」と言って背中を押してくれた。

 石川にとってパワーカーブとは──。

「僕にとっては、なくてはならないボールです。それがあって僕がある。自分の投球スタイルを支えるボールです。僕の場合、ストレートが高めにいくことが多い。それだけを見れば欠点ですが、打者はカーブをケアすることで高めの直球は打ちづらくなる。欠点を武器に変えてくれる球、それがパワーカーブです」

 ところで、パワーカーブという名称は報道陣から「何て書けばいい?」と催促されて、石川自身が言い出したのだという。そもそも日本球界で最初にパワーカーブという球種を口にしたのは、今から10年ほど前のダルビッシュ有だった。

 石川は、一昨年オフから同僚の千賀滉大とともにダルビッシュの自宅のあるテキサス州を訪ねて合同トレーニングを行なっている。

「ダルビッシュさんは常に探求心を持っていて、どうしたらよくなるのか、何がいいのかを常に考えることで洗練されて、それで今の自分があるという話をいつもしてくれます」

 新型コロナウイルスの影響で開幕が延期になった期間中、石川は千賀らとともに、これまでとは別の考え方の投球フォーム取得に挑戦した。最初はフルモデルチェンジまで考えたが、それは断念した。

「うまくいかないこともありますし、何が変わったというよりも、変わろうとしたことが大事なんじゃないかなと思います。挑戦したことで見えたものは絶対あるし、進むことを怖がったら何も残らないですから」

 昨年は自主トレ中に右太ももの肉離れに始まり、シーズン中は右ヒジ痛を発症して2試合のみの登板だった。だが今季、見事に完全復活を遂げてみせた。

「僕はまだ立場を確立されたピッチャーじゃない。危機感は常にあります。僕にできることは野球のことを第一に考えて、常日頃から生活すること。それくらいしないと、野球って甘いものじゃないですから......」

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