DeNA大家友和コーチが選手に伝えたい。「球団が選手と契約した意味」 (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

「ファームスタートで悔しい......だから、どの時期にどういう状態になろうと目標を立てられる選手もいるんです。それはもう、放っておいてもできると言ったら語弊がありますけど、自分で野球のルーティンが決まっている選手です。もちろん、そこまでの選手じゃなくても、契約した以上は絶対にチャンスがある、ということだけは間違いありません」

 ファームの選手にとって心強く思える言葉が発せられてきたが、そんな大家のコーチングの原点をたどれば、アメリカで受けた指導に行き着くのではないか。

 言い換えれば、かつての日本プロ野球で主流だった、コーチ自身の経験を元にした指導、上から頭ごなしに命令する指導、それらを反面教師にしているところもあるのではなかろうか。

「たしかに、経験則で語られることが多くて、そこに則らないと評価してもらえないということはあったかなと思います。彼らの信じていること、やってきたこと、つまり経験ですけど、それ以外のことを持ち出してもらうときがなかったですね、アメリカに行く前は。

 ただ今の僕には、そういう昔のことを掘り起こしていく、その行為自体が必要ないですし、それだけの時間もありません。別にそこと闘っているわけじゃないので、そんなことはどうでもいいんです。今、やらなきゃいけないことがたくさんありますから」

 現役時代にコーチから受けたような指導はやりたくない、自分がコーチにされた嫌なことだけはやらない、と思って選手をサポートするコーチは今の球界に増えつつある。だが大家の場合、もともと反面教師など必要としていないのだった。

「たしかに、昔の指導法と今の指導法を対比するとわかりやすくなると思います。でも、あまりそこを気にするとやっていられないでしょうし、昔の指導法と闘うとネガティブなほうに向かうことになると思う。そもそも、経験則だけでものを言うという指導に対して、それを正すのが僕の仕事ではないですから」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る