巨人・高梨雄平「えっ!」と驚くドラフト秘話。楽天が評価した理由 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 そうした採用のパターンは何度か聞いたことがあり、その時も「なるほどな......」と、スッと胸に落ちたものだ。事実、高梨は2年目を終えると上がる(チームを退く)ことが決まっていたという。あるスカウトがこんな話を教えてくれた。

「高梨の社会人2年目だったと思います。関係者から、一度ピッチングを見てくれないかと言われて、グラウンドに行ったことがありました。聞くと、チーム事情により今年限りで退くことが決まっているとのことだったのですが、高梨は投手として勝負したいと。それでプロとしての可能性を教えてほしいということでした」

 ブルペンで見た高梨は、左のサイドハンドからストレートは130キロちょっとで、スライダーとシンカーを両サイドに落とすスタイルで、あまり目立つ要素はなかったという。

「今は140キロが出ない投手を強く推すことはできません。よほどすばらしい変化球があれば別ですが......140キロ台中盤は当たり前で、150キロでも驚かない時代ですからね」

 そんななか、楽天の後関昌彦スカウト(現・スカウト部長)だけは、高梨に対して違う見方をしていた。

「以前はスリークォーターで投げていたのが、サイドよりもまだ低い位置から投げていた。それがすごく新鮮でしたね」

 都市対抗や日本選手権など、大きな大会ではほとんど投げておらず、後関スカウトも高梨の実戦でのピッチングを見たことがなかったという。

「大学の時しか見ていなかったので、ずいぶんと(腕を)下げたなぁ......と。年齢的にも23、24歳ですよね。この歳でこれだけ大胆にフォームを変えるって、よほどの"決心"がないとできないんですよ。体もできあがって、関節の可動域も決まってきますから。ひとつ間違えたら故障しておしまいです」

 なにより、後関スカウトは高梨の覚悟を感じたという。

「JX−ENEOSのような大きな企業を捨てて、プロに挑戦するって......『ホントにいいの?』って。相当な決意だったんだろうなと、逆に感心しました」

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