藪恵壹が見た藤浪晋太郎の106球「インコースを突けたら違う結果に」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Kyodo News

 もし1球でもインコースの厳しいところに突けていたら、あそこまで踏み込めなくなりますし、違った結果になっていたのではないでしょうか。

 もちろん、藤浪自身もそこはわかっているはずですし、実際プレートの踏む位置を一塁側にするなど、「右打者へのインコース」がテーマだったことは理解できました。

 プレートの一塁側を踏むと、右打者のインコースに対しては視界が開けているので投げやすいんです。逆に三塁側を踏んだ時にインコースを投げようとすると、ボールゾーンから入れてこないといけないので難しい。だから、一塁側を踏んでいるのを見た瞬間、彼のやりたいことは理解しましたし、やろうとしていることは間違いではありません。あとはどれだけ精度を上げていけるかだけだと思います。

 冒頭でも触れましたが、ボール自体は本当にすごかった。これだけのボールを投げられていれば、次もチャンスはあるでしょう。ただ、間違っても同じ失敗をしないことです。

 藤浪という投手は、普通にローテーションに入って、普通のピッチングをすれば絶対に勝てます。以前から思っていることは、完璧さを求めるあまり、逆に苦しいピッチングになっているのではないかと。フォアボールを出したくない、ランナーを背負いたくない、点を取られたくない......そういう気持ちが強すぎて、ピッチングが窮屈になっているように映っていました。

 完璧を求めることは大事かもしれませんが、今の藤浪に必要なことは追い込まないこと。だから、「6回3失点まではOK」とか、「今日は120球を目標に投げる」とかもっとハードルを下げてもいいような気がします。

 藤浪は試合をつくるのがうまいピッチャーですし、今回の広島戦でも2〜5回まではしっかり緩急を使って、いいリズムで投げていました。それだけに6回のピッチングが悔やまれますが、この日のピッチングは自信を持っていいと思います。

 今後、阪神が上位争いをするうえで藤浪の力は絶対に必要です。1つ勝てば気持ち的にも楽になりますし、本当の意味で自信になる。まずは1勝。そこをクリアできれば、藤浪は生まれ変わるような気がします。

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