宮﨑敏郎「やめていたかも」。ギリギリ進んだプロの世界で球界屈指の打者へ (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 今季はコロナ禍で開幕が遅れ、練習できる時間も限られた。それでも、宮﨑は今できることに集中した。

「短い練習時間だったので、力を出せるところは全力で出すことを意識していました。スイングだったら思い切り振る時間、本数を増やす。走るにしても全力で走れる、自分のなかでの今日の全力を出せるようにやっていました」

 練習で「全力」を出すためには、その前から入念な準備が必要になる。宮﨑は練習前から「今日やれることを書き留めて練習に入っていた」という。

 努力することは誰にでもできる。だが、努力を続けることは極めて難しい。幼稚な質問だと自覚しつつも、聞かずにはいられなかった。「なぜ、宮﨑選手は頑張れるのですか?」と。宮﨑は少し考えたあと、こう答えてくれた。

「大学、社会人ではプロを目指して、なんとか上のレベルで、日本の一番高いレベルで活躍したいという思いでやってきたつもりです。プロに入ってからは、プロで活躍したい、プロで一番になりたいという思いで。今も自分なりにやっているつもりです」

「プロで一番」という意味では、首位打者を獲り、ベストナインも獲った。それでも一番ではないのだろうか。そう聞くと、宮﨑は「自分はまだ一流と呼ばれる領域には達していないと思う」と答え、こう続けた。

「それ(タイトル)がすべてではないと思うので。毎年同じようなプレッシャーのなかで、同じような成績を出すということがいかに難しいことか。そこはやっぱり、高いレベルでやられている人はすごいなと感じるんです」

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