巨人移籍のウィーラーに涙の別れ。なぜ楽天ファンに深く愛されたのか (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Taguchi Yukihito

 そもそもウィーラーは、アメリカでの実績が皆無に近い選手だった。メジャーリーグでの出場は、ニューヨーク・ヤンキースに在籍していた2014年のみで、出場はわずか29試合。打率1割9分3厘、2本塁打、5打点と目立った成績を残すことなく、日本にやってきた。

 ウィーラーはアメリカ時代の自分のプレースタイルを、ヤンキースでチームメイトだったイチローを引き合いにこう話していた。

「メジャーリーグの選手は、イチローさんのようにセンターへ強い打球を打つことを心がけている。あの舞台で活躍できる選手は、やろうと思えばどんなことだってできてしまうんだ。そのなかで僕は、逆方向のバッティングやバントというのが役割だった」

 スモールベースボールを身上としていたウィーラーだったが、日本では昨年までの5年間で106本塁打と、長距離砲として存在感を示す。その背景には、彼の勤勉さがある。

 相手投手の変化球を頭に叩き込んで、打席でのシミュレーションを展開させる。チームメイトの意見にも耳を傾け、自身のパフォーマンスに反映させた。

 なかでも、ウィーラーが最も気を配っていたことがある。それは敬意を払うことだ。

 多くの外国人選手にとって"壁"とも言える日本の文化。言葉や食事といった生活面はもちろん、野球でも日本の投手は変化球が多く、制球力も高いため、高度な駆け引きが求められる。それは打つだけでなく、走塁や守備、サインプレーなど多岐にわたる。そうしたすべてのことを肯定し、日々、吸収しようと懸命に努めた。

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