2020.07.05

勝利数「歴代2位」の投手は、
320勝のライバルと競って勝ち続けた

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


「もう、走れ、走れ、やね。僕は鳥取県の生まれですから、高校の時は冬に鳥取砂丘、1週間に3回ぐらいは2キロ往復ですよ。それもね、3年生は波打ち際の硬いとこ走れるけど、1年生は砂で足がもつれるようなとこ走らされてねえ......。まあ、それで下半身が鍛えられたのかな。

 ただ、本当に今回の講習会で感じたのは、確かに体力面、特に下半身が弱い子は多いけども、今の子は技術的に素晴らしいし、僕らの時よりずーっと進んでるってことやね。もう、すごいもんがありますよ」

 ならば、なぜだろうか、と思う。米田さんが高校生だった頃よりも高い技術を持つ選手が多いなか、最終的にプロに進み、第一線で活躍できる選手は体力面も不足はないはずだ。それでも今の時代、何年も二桁勝利を続けるような投手は少ない。理由を尋ねると太い眉がグッと上がって目が見開かれ、素早く老眼鏡が外された。

「少ない、というよりも、しないだけですよ。できるのに、自分の限界に挑戦しないんです。筋肉ちゅうのは挑戦して、強くしていかなきゃいかん。そういうものをやってないでしょ? 練習で100や150放ってね、ゲームで150放ろうと思ったら、そらぁ、しんどいですよ。

 僕ら、300放ってその半分が150やと思ってるから。キャンプで300放ると2時間ぐらいかかります。受けてくれるキャッチャーが大変や。昔はね、そうやって、へばってへばって投げておればね、きれいなフォームになるんだっちゅう教え方をされました」

 すべての選手に当てはまるかどうかはわからない。が、「へばる」ことによって余分な力が抜けていいフォームになる、という話を他の野球人にも聞いたことがあった。

「そうそう。余分な力が抜ける。そこまでやって投げる体力もついていくのに、やってないんですよ。何で、それをコーチが教えてやらんかなあ、ちゅう疑問がありますね。例えば、井川にしても、上原にしても、1年1年、悪くなってるでしょ?」