吉川尚輝が絶望から復活。超一流のスピードが守備では弊害になっていた (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 吉川を語るうえで避けては通れないのは、肉体面の不安である。92試合に出場してレギュラーに定着しかけた2018年は、左手を骨折して戦線離脱。2019年は開幕から打撃好調で打率.390をマークしながら、腰痛のため長期離脱を余儀なくされた。まだフルシーズン活躍した経験がないのだ。

 とくに、昨年の腰痛は深刻だった。

「いつ治るかもわからない状態でしたし、リハビリをして、動き始めて、また痛くなる......の繰り返しでした。何をやってもよくならない日々がずっと続いていたので、『また野球ができるようになるのかな?』という不安はありました」

 とくにスピードを売りにするタイプだけに、不安は大きかった。あまりの絶望に、しばらくは「何も考えられなかった」と吉川は明かす。

 だが、夏場に入ると少しずつ状態が上向いてきた。「できるメニューが増えてきて、少しずつ光が見えてきた」という吉川は、ある決意を固める。

「もう1回体を強くして、一軍の舞台でいいプレーをしたい。チームに貢献したいと思いました。まずは、もう1回イチから体づくりから始めようと」

 フルシーズン戦うためのポイントを聞くと、吉川は言い淀むことなく答えた。

「腰をケガしたので、そこに負担が100パーセントかからないように、胸郭や尻回りを鍛えて、少しでも負担を分散できるようにしています。そのトレーニングとケアは今も毎日欠かさず、続けています」

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