吉川尚輝が絶望から復活。超一流のスピードが守備では弊害になっていた (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 今年5月31日、東京ドームで行なわれた巨人の紅白戦で吉川はこんなプレーを見せた。

 無死一塁の場面で左打者の加藤脩平が、セカンド正面やや右に強烈な打球を放った。セカンドの吉川はその場でじっと待ち、左半身を引いた半身(はんみ)の体勢でショートバウンドを抑えて捕球。そのまま左回転して二塁ベースに入った坂本勇人に送球し、4→6→3のダブルプレーを完成させた。

 このプレーにこそ、吉川の進化が表れていた。

「ちょっと前までだったら、ああいう打球に対して無理やり正面に入ろうとして、厳しい体勢になってセカンドに悪送球を投げていたと思うんです。バウンドはあまりうまく合わなかったんですけど、ハンドリングでなんとか捕れて。なるべく捕りやすく、投げやすい位置で捕れるようになってきたと思います」

 そして、吉川の守備を下支えしているのは、「準備」である。投手がモーションに入る前から、吉川の守備は始まっている。

「ゲームのなかで『こういう打球がきたら』というイメージをしながら、プレーに入っています。何通りものパターンをイメージして、ポジショニングをとって、準備しておかなければいけないので。そうしないと、いいプレーや間一髪のプレーはできないのかなと思っています」

 今季はコロナ禍の影響を受けて無観客試合が続いているが、「影響は感じない」と吉川は言う。観客がいようがいまいが、守備中に考え、準備することは多いからだ。

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