ホークスにまたまた期待の新星。栗原陵矢がブレイクまでに6年を要した理由 (3ページ目)

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 今から8年前の2012年11月。秋の北信越大会を制した春江工業高(福井/2016年に閉校)は、明治神宮大会に出場していた。

 スタメンのなかに1年生が5人。そのなかのひとりに栗原もいて「4番・捕手」で試合に出ていた。当時は175センチ、70キロといかにも1年生らしい線の細い体つきだったが、それでもプレーは上級生のようなしたたかさがあった。

 初回、いきなり4点を先取され、なおも一死満塁の大ピンチ。この場面でややリードが大きかった三塁走者を矢のような送球で刺してみせたのだ。その後も、気を抜いて離塁している走者がいると、二塁であろうとも積極的に刺しにいく。その送球が白い糸を引くように美しい軌道だった。

 打撃でも、コースに逆らわず打ち返す技術力の高さ。線は細かったが、機敏かつ強肩で、しかも強いハートを持ったキャッチャーが現れたと、胸が高鳴ったものだ。

 それから半年経った2013年春の北信越大会。どれだけ成長しているのか......と楽しみにして行ったが、思わず「ありゃ」と頭を抱えてしまった。

 シートノックに備えてダグアウト前でキャッチボールを始める春江工の選手たち。そのなかでプロテクター、レガースを身にまとった栗原はなかなかボールを投げず、楽しそうに隣の選手と語り合っているばかりで、いっこうに肩を温めようとしない。

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