西武・與座はすべてが魔球のインパクト。「伝統の系譜」に名を連ねるか (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 與座がすごいのはボールだけではない。誰にもわからないようにテイクバックの大きさを微妙に変え、踏み込んでいく際のスピードにも強弱をつける。右打者にはプレートの一塁側を踏んで、左打者に対しては三塁側から投げる。そうすることで懐を突くボールに角度をつけ、外のボールは打者の目から遠い空間にラインをつくる。ひっそりと仕掛ける"隠しワザ"。それがなければ9イニングずっとタイミングを外し続けられるわけがない。

 沖縄生まれの選手特有のバネを生かしたフィールディングにバント処理。この隙のなさこそ、與座の真骨頂である。

 プロ1年目の10月に右ヒジのトミー・ジョン手術を受け、育成選手契約という試練を味わった。昨年秋に支配下登録選手に復帰し、今が一番、野球が楽しい"伸び盛り"の時期だろう。

 與座のような投手を得意とする打者は、おそらく皆無に等しい。ほとんどの打者が「嫌だなぁ」「打ちにくいなぁ」と、ネガティブな印象を持っているはずだ。それだけでも十分なアドバンテージである。

 とはいえ、プロの投手としての経験が浅く、技術的にもまだまだ幼い部分を残している。それでも、厚かましいほどの勝負度胸で並み居るプロの強打者たちをきりきり舞いさせてくれるに違いない。

 高橋直樹、永射保、松沼博久、牧田和久......西武に代々伝わる"アンダーハンドの系譜"。そこにしっかりと名を刻んでいけるのか、いよいよ本当の意味でのプロ生活が始まる。

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