西武・與座はすべてが魔球のインパクト。「伝統の系譜」に名を連ねるか (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

「このピッチャーはプロの世界でもやっていける」

 そう思ったのは、大学時代の與座のピッチングを見た時だ。

 2017年6月、全日本大学野球選手権大会。岐阜経済大のエースとして石巻専修大戦に先発した與座は、9イニングをわずか111球、1安打10奪三振(2四球)で完封勝利を飾った。しかも7回二死までノーヒット、唯一打たれたヒットもボテボテの内野安打だった。東京ドームで見たその日のピッチングの見事さは、いまだ鮮烈な記憶として残っている。

 とにかく体がよく動いていた。まさに"躍動感"という言葉がピッタリとはまるピッチングで、マウンドに立つ與座はものすごく大きく見えた。

 クイックモーションのような素早さから思い切り腕を振って投げ込んでくるから、実際の球速よりもはるかに速く見えた。スコアボードの球速表示は120キロ台後半でも、おそらく打者の体感速度は140キロを超えていたのではないだろうか。

 変化球も強くて速い腕の振りから放たれるため、スライダーもホップしながら横滑りしているように見える。初めて対戦する打者にとってはすべてが"魔球"だったに違いない。

 事実、石巻専修大にはプロ注目の小野侑宏(ゆきひろ)というミートセンス抜群の好打者がいた。この天才バットマンが最後までタイミングを合わせられず凡打を繰り返す姿を見て、野球界にまたすばらしいアンダーハンド投手が出てきたものだと胸が躍ったものだ。

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