2020.06.09

松永浩美から小久保裕紀、内川聖一へ。
根本陸夫が仕組んだリーダー継承

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

 そして、継承といえば、現在のソフトバンクのシートノックが想起される。大半の球団はまず若手からノックを受け、主力選手はうしろで声を出すものだ。だがソフトバンクの場合、必ずレギュラー陣が最初に受ける。これも松永のやり方と通じている。

「阪急のシートノックも主力が先でしたからね。それを僕が教えて、小久保が継いでくれたんでしょう。ただ、僕は別に継承されて嬉しいとは思わない。小久保も、内川も、主力が先に受ける意味は理解したんだろうなと思うだけ。理解して実践しているから、ソフトバンクは強いんじゃないですか」

 1994年4月9日、兵庫・神戸で行なわれたオリックスとの開幕戦。古巣相手だけに松永は試合前、宿舎から球場に向かうバスのなかでマイクを手に取り、緊張するナインに向けて言った。

「みなさん、おはようございます。僕はトレードで出された人間なんで、オリックスが憎くて仕方ないんですよ。今日の開幕戦はとにかく、何が何でも僕は勝ちたいんで、よろしくお願いします」

 あちこちから笑いが出て、一気に緊張がほぐれた。雰囲気がよくなったその日のダイエーは序盤から打線が爆発し、17対6で大勝。試合後、6打数2安打2打点と結果を残した松永をベンチで呼び止め、根本が「マツ、報われるね」と言った。この年、1番・三塁で活躍し、打率.314を残した松永はベストナインに選ばれ、ゴールデングラブ賞も受賞。球団の期待に応えた。