高橋礼が阿部慎之助に投じたインハイ。135キロ直球にアンダーハンドの真髄を見た (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

無料会員限定記事

 そんな高橋のピッチングで強烈な印象として残っているのが、昨年の巨人との日本シリーズ第2戦だ。

 先発した高橋は5回までひとりの走者も出さない完璧なピッチングを披露。結局7回を投げて、岡本和真に許した1安打だけに抑え無失点。日本シリーズ初先発、初勝利の快投を見せた。

 長い手足を思う存分しならせ、見るからに気持ちよさそうに投げていた。高橋にとってこの日最大のピンチは7回。一死から坂本勇人に四球を許し、二死後、4番・岡本にレフト前に運ばれ二死一、三塁。ここで阿部慎之助が打席に入る。

 スコアは0対0。しかも阿部はシーズン限りでの引退が決まっており、一打出れば試合の流れどころか、シリーズの行方も左右しかねない。このプレッシャーのなかで高橋がどんなピッチングをするのか注目していた。

 まず初球、捕手の甲斐拓也は中腰に構えて"インハイ"を要求する。狙いは、阿部にインコースを意識させることだ。手を出してくれて、ファウルなら大儲け。しかし、ちょっとでも甘くなれば一発の恐れもある。疲れているはずの7回で、打者は百戦錬磨の阿部。しかも一、三塁に走者を背負っている。高橋にとっては、かなり難しい注文だったはずだ。

 地面すれすれから放たれたボールは、グイッとホップして阿部の胸元を突いた。その球を阿部は渾身のフルスイングで豪快に振り抜いた。ファウルにはなったが、スイング軌道があと少し高かったら、間違いなくヤフオクドーム(現・ペイペイドーム)のライト上段に突き刺さっていたであろう。それほどタイミングは完璧だった。

全文記事を読むには

こちらの記事は、無料会員限定記事です。記事全文を読むには、無料会員登録よりメンズマガジン会員にご登録ください。登録は無料です。

無料会員についての詳細はこちら

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る