「目をつぶって打ったら本塁打」。長嶋一茂の初安打に見たミスター復活の夢 (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

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 プロ野球と大学野球とのレベルの差であるとか、レギュラー争いの過酷さなど、部外者にはわかるはずがない。半年前まで同じ寮に住み、同じポジション(サード)を守っていた後輩として、ただただ先輩の活躍を願っていた。いや、信じていた。

 鳴り物入りで入団した"ドライチ"は春季キャンプでも一軍メンバーに入り、オープン戦で打率3割をマークした。元メジャーリーガーのダグ・デシンセイがライバルだったが、「一茂さんならやってくれるはず」という根拠のない期待があった。

 しかし1988年シーズンが開幕しても、一茂のバットから快音は聞こえない。それまで、7打席ノーヒット。4月27日、神宮球場での読売ジャイアンツ戦。6回1アウトで代打に出た一茂に、神宮球場の大観衆が声援を送った。マウンドに立つのは元メジャーリーガーで剛球投手のビル・ガリクソンだった。

 初球は胸元近くに外れてボール、2球目はアウトコース高めを見逃して2ボール。3球目の内角ストレートがストライク。4球目を空振りして、追い込まれた。カウント2-2からの5球目を強振すると、打球はセンターバックスクリーンに飛び込んだ。

 野球部の寮にいた私は、足早にベースを駆ける一茂の姿をテレビで見ていた。寮のすべての部屋から、神宮球場に負けないほどの歓声が上がったことは言うまでもない。プロ初ヒットが、元メジャーリーガーからのホームラン。スーパースター誕生を予感させるのに十分な"事件"だった。

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