球史に残る大死闘。引退を決意していた梨田昌孝が執念の一打を放つ (2ページ目)

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki
  • photo by Kyodo News

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 梨田はこの年、現役17年目。手術歴のある右肩の具合が思わしくなく、じつは前年で引退するつもりだった。だが、仰木監督の就任が決まり、選手のまとめ役として引退を1年延ばしていた。

 試合は1試合目から激闘となった。近鉄は1対3と2点を追う8回表、代打・村上隆行の2点タイムリー二塁打で同点に追いついた。近鉄の押せ押せムードだったが、ここでもうひとつの敵が立ちはだかる。「ダブルヘッダーの第1試合は延長戦はなし」という規定である。もし近鉄が9回表に得点を挙げることができなければ、その時点で優勝の可能性が消えることになるのだ。

 そして迎えた9回表、近鉄は一死から淡口憲治があわやスタンドインというライトフェンス直撃の二塁打を放つ。ここで俊足の佐藤純一が代走に出て、勝ち越しの機運は一気に高まった。

 ここでロッテは、抑えの切り札・牛島和彦をマウンドに投入。「牛島ぁ〜、おまえ関西人やろ! 手加減したってくれぇ〜」。普段は閑古鳥が泣く川崎球場も、この日ばかりは立錐の余地がないほど観客が詰めかけ、スタンドをほぼ占拠した近鉄ファンが絶叫する。

 むろん手加減したわけではないが、続く鈴木貴久の打球はライト前へ。佐藤の足なら十分ホームに還れる......だったはずが、前進守備のライト・岡部明一から好返球がくる。佐藤は思わず三本間に立ち止まってしまい、タッチアウト。勝ち越しのはずが、二死二塁と絶体絶命のピンチに追い込まれてしまった。

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