ヤクルトのドラフト秘話。八重樫幸雄が語る、
いろいろ誤算があった選手たち

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

2009年から2016年までヤクルトのスカウトを務めた八重樫氏 photo by Hasegawa Shoichi2009年から2016年までヤクルトのスカウトを務めた八重樫氏 photo by Hasegawa Shoichi――2010年のドラフトについて、他に印象に残っている選手はいますか?

八重樫 この年のドラフト5位の久古健太郎は印象深いな。彼は当時、日本製紙石巻に在籍していたんだけど、日産自動車の野球部が休部になって日本製紙に移籍して、まだ1年目だったんです。日本製紙石巻に失礼だから、本来ならば移籍直後に指名してはいけないんですよ。確かにいいピッチャーだったし、「面白い素材だな」とは思っていたけど、僕の頭の中ではこの年に指名する考えはまったくなかったんですよね。

――それでも、ドラフト5位で指名したのはどういう事情だったんですか?

八重樫 チーム事情でどうしても左投手が手薄だったんですよね。それで、当時のスカウト部長が「誰かいい左ピッチャーはいないか?」というので、久古の名前を挙げたら「ぜひ指名しろ」ということになって、石巻の監督に頭を下げて、本人の意向を確認してもらって指名することにしました。

――ルーキーイヤーの2011年には52試合に登板するなど、貴重な中継ぎ投手として活躍しましたね。

八重樫 彼の実力からすれば、「左のワンポイント」とか「1イニング限定中継ぎ」だったら、ある程度は活躍できるだろうとは思っていました。結果的に故障や体調不良もあって、1年目がキャリアハイになったけど、印象深いいいピッチャーでしたね。

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