給料未払いで裁判、GM逃亡...無名の日本人投手が体験した海外リーグの現実 (5ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

 いきなり対戦相手のフィエラス・デル・サン・フェルナンドにトレードされた安井は、前日までの敵とともにバスに揺られてマサヤに行くことになった。だが、この田舎球団の現実は、名門の人気チームとは雲泥の差だった。

「ホテル住まいから寮暮らしに変わりました。本拠地から歩いて3分ぐらいのところにあるホコリだらけのアパートに、地方から来ている選手と一緒に住むんです。外国人選手もそこなんですけど、あまりのひどさにみんな帰っちゃって......我慢できるヤツだけ残っていました(笑)」

 このフィエラス・デル・サン・フェルナンドはリーグ屈指の貧乏球団だったが、これだけではすまなかった。トレード後も月給は維持されるはずだったのだが、維持されるどころか、支払われなかった。安井は翌シーズンもこのチームでプレーしたのだが、結局、給料も渡航費も支払われることはなかった。

 そんな安井にビッグチャンスが訪れたのは2011年。北米独立リーグの"四天王"のひとつで、2A級とも称されるカンナムリーグ(Canadian American League)のピッツフィールド・コロニアルズと契約を結ぶ。名門リーグとあって、プロスポーツ選手用のP1ビザも渡航費も用意してくれた。しかし、現実は甘くなかった。

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