給料未払いで裁判、GM逃亡...無名の日本人投手が体験した海外リーグの現実 (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

 初めての"プロ生活"に安井はやる気満々で臨んだが、開幕2戦目にリーグ最初の満塁ホームランを打たれてしまう。その後、リリーフで無失点に抑えるも、3カード目が終わったあと、クビを言い渡される。

「試合前の練習が終わったあと、突然、監督に呼ばれたんです。それで『野球はハードなスポーツだ。今までありがとう』って。球団が元プロの日本人選手を探してきたようで、その人に押し出されるかたちでリリースされました」

 あまりに儚く終わってしまった安井の最初のプロ生活だったが、じつはこのリーグはひと月後の7月に、オールスター戦を最後に解散してしまった。

 2005年、安井はアメリカの独立リーグ球団との契約にこぎつけるも、ビザが発給されず、プレーすることはかなわなかった。それでもプレーをあきらめきれず、アメリカやカナダのセミプロリーグでプレーした。

 セミプロリーグというのは、サマーバケーション中の大学生の選手を集めて行なわれるアマチュアリーグで、チームによっては社会人選手や外国人選手も受け入れている。地元の金持ちがオーナーを務め、プロ野球と同じようにシーズンシートを含めたチケット販売をしているが、これはチーム運営費でほとんど消えてしまうため、一部の選手に"車代"程度のギャラが支払われるだけ。それでも安井はホームステイだけの面倒は見てやると聞き、自腹で参戦した。

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