八重樫幸雄はヤクルトスカウト時代に苦悩。
「本当は話したくない」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

――各球団30分ずつ、入れ替わりで条件提示などを行なったんですか?

八重樫 具体的な提示をしたかどうかは覚えていないけど、「もし雄星選手がヤクルトに入ったら......」ということを、当時のスカウト部長の小田義人さんと話をしました。ヤクルトの前が広島だったんだけど、広島は雄星を指名する予定がなくて、5分でミーティングを終えたんだよね。で、当時の広島のスカウトが「八重樫さん、うちの残りの25分も使っていいからね」と言われたことはよく覚えてる(笑)。

――結果的に菊池雄星選手を1位指名したものの抽選で外してしまいました。この年のドラフトで八重樫さんの担当した選手は他にいましたか?

八重樫 育成1位の曲尾マイケは青森山田だったから、僕の担当ですよ。バッティングはいいし、足が速いから身体能力も抜群だった。「これは伸びるぞ」と思ったので、球団に推薦したんだけど、「うちでは育成でしか獲れない」ということになって、育成1位になった。だけど、うちには育成システムがまだ確立していなかった。そして、いろいろあって、野球に専念できなかったのが残念だったな......。

――曲尾選手は「池山2世」として期待されていましたが、支配下登録されることなく、3年目となった2012年オフに自由契約となってしまいました。

八重樫 そうですね。初めて自分が担当して入団した選手だったし、すごく期待をしていただけに、とても残念だった。この年のドラフトでは、直接の担当ではなかったけど、3位の荒木貴裕は近畿大学時代に僕も見に行きました。荒木は小田さんが担当だったんだけど、一緒に見に行って「なかなか思い切りがいいバッティングをするな」って感じたことは覚えているな。

(第19回につづく)

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