八重樫幸雄はヤクルトスカウト時代に苦悩。
「本当は話したくない」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【各球団によって異なるスカウティング事情】

――スカウトの年間スケジュールというのは、どのようなものなんですか?

八重樫 2月には、その年のドラフトの獲得方針を決めて、即戦力で必要なポジション、数年後を見据えて獲得したいポジションを絞り込んでいく。それから、高校、大学、社会人とあるけど、基本的にはそれぞれの大きな大会はもちろん、そこから逆算して予選を見に行くことが中心かな。そして、それ以外の期間に担当地区の有望選手を見に行き、選手の状態を確認しつつ、監督や関係者にあいさつをしたり、情報収集をしたり、そんな感じですかね。でも、そう自由には行けないんですけどね。

――「自由には行けない」というのはどういうことですか?

八重樫 大会本番はともかく、練習試合程度では球団の許可が下りないこともあったから、行きたくても行けない、見たくても見られない。そんなことは結構ありましたよ。

――それは、予算上の問題ですか? 八重樫さんは北海道と東北担当でしたが、横浜在住ですから、選手を見るためには当然、交通費、宿泊費が必要になりますよね。

八重樫 予算の問題なのかどうかはわからない。でも、「行きたい」と言っても、「別にまだ必要じゃないのでは?」と言われることもあった。実際のところ、大会直前ぐらいじゃなきゃ許可は下りなかったからね。だから、スカウト時代のことはあんまりしゃべりたくないんだよ。不満ばっかり出てくるから(苦笑)。

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