元ロッテ渡辺俊介が語る「野球と暴力」。鉄拳に頼らないベストな指導とは (6ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

「初めのうちは、選手がわかるまで何度でも言い聞かせるのがいいと思っていたんですが、それはそれで非効率的かなと思うようになりました。選手が自分で発想して、考えて行動した時が一番覚えがいいし、成果も出る。だから、そういう環境をつくろうと心がけています」

 社会人野球では、高校卒業後に入社する18歳の選手もいれば、大学を経由して入ってくる選手もいる。体の成長度合いも、野球選手としての成熟度もさまざまだ。

「それまでの鍛えられ方もいろいろです。もちろん性格はみんな違う。コーチの仕事は、その選手に合った練習法を選ばせることではないかと考えるようになりました。その先の段階では、自分なりの方法を生み出してほしい。だけど、現段階では『AとBとCがあるけど、自分には何が必要だと思う?』と提示しています。目の前に選択肢を出して、『うまくなるためにはどうすればいいのか?』を考えさせようと」

 プロ野球で十数年もプレーしているベテランなら別だが、普通の選手は、練習メニューは与えられるもので、選ぶものだとは考えていない。だから当然、初めは戸惑う。

「選手ははっきりと言いますよ、『これをやれ!』と言われるほうが楽ですと(笑)。エクセルで練習メニューを共有しておいて、ある程度の時期になったら、それがうまくいっているかどうかを選手と話します。

 たとえば、体重移動がうまくできないピッチャーがいるとします。それを直すためのトレーニングを僕も考えますが、『どんな練習でもいいから、自分で考えてこい』と言います。その選手の考えたものが間違っていてもいいんです。技術をつかむための練習だったら、ケガさえしなければマイナスではないので。いまは自分でつくりだすということを選手たちにやらせているところです。ストレッチもそうですが、自分の体と相談しながらでないと、絶対に効果は出ません」

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