ロス五輪決勝、吉田幸夫は思った「アメリカに勝ったら狙撃されちゃう...」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 結局、チャイニーズ・タイペイはアメリカに1-3で負けたんですけど、現地の人が「アメリカは100マイルピッチャーを打ち崩した」と大喜びしていた。100マイルといえば160キロじゃないですか。そりゃ、打てないよってことになりますよね。

 とにかく私としては、韓国戦の時と同じスタイルを貫きました。高めの真っすぐは打たれない自信がありましたから、低めの力のない球をアッパースイングですくい上げられないように......とにかく一発だけには気をつけて投げました。

 韓国戦で私が先発して宮本(和知/現巨人投手チーフコーチ)くんにつないで、最後は(伊東)昭光(元ヤクルト)で締めるというパターンができましたから、チャイニーズ・タイペイとの試合でもいけるところまでいってやろうと思っていました。1点は取られましたけど、私は延長10回の途中まで投げて、宮本、昭光にあとを託しました。その後、日本はサヨナラで勝って、ついに決勝へ進むことになったんです。

 ロサンゼルス五輪、決勝。日本の相手は、準決勝で韓国を倒したアメリカだった。

 ドジャースタジアムは異様な雰囲気に包まれていました。正直、思ったのは、もしこのままアメリカに野球で勝ったりしたら、ライフルで狙撃されちゃうんじゃないかなと......それが一番怖かったんです。

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