まさか!のロス五輪韓国戦に先発。吉田幸夫が一世一代の投球を見せた (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 オリンピックに出てきた国にアンダースローのピッチャーが誰もいなかったので、相手が私のピッチングスタイルに慣れていなかったということはあったと思います。ただ、私も逃げませんでした。相手のデータもないし、ぶんぶん振り回してくる韓国のバッターを相手に、インコースで勝負するのは勇気が必要なんですけど、それでも真っすぐを中心にインコースで勝負しました。インハイに真っすぐをどんどん投げ込んでおけば、アウトコースは私のあんまり曲がらないスライダーでも手を出してくれたんです。

 韓国に限らず海外のバッターというのは、右バッターだったらどんどん踏み込んできて、左足がどんどん前へ出てきます。そうするとアウトコースいっぱいに投げてもど真ん中になってしまうので、踏み込ませないようにインコースをかなり意識して使わなくちゃいけないんですけど、そのあたりは同郷の嶋田宗彦(箕島高校で甲子園を春夏連覇。

 当時は住友金属のキャッチャーで後に阪神タイガースに入団)がうまくリードしてくれました。アウトコースはストライクゾーンに投げる必要がありませんでしたから、インハイに速い真っすぐ、アウトローのボールゾーンにスライダー......この組み立てがちょうどいい緩急差になったんでしょう。韓国のバッターにはほとんど打たれませんでした。

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