まさか!のロス五輪韓国戦に先発。
吉田幸夫が一世一代の投球を見せた

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 吉田は和歌山県の南部高校から青山学院大を経てプリンスホテルへ入社。甲子園に出場したわけでもなければ、全国的にその名を知られていたわけでもない。プリンスホテルが行なった強化試合でキューバを相手に好投したことが評価され、全日本入りを果たしていた。

 高校2年の秋、センバツをかけた新宮高校との試合で、延長18回引き分け。再試合でも完投しながら負けて、あと一歩というところで甲子園には出られませんでした。じつはその引き分けた試合の翌朝、肩が上がらなくなりましてね。病院に行ってレントゲンを撮ったら、右の肩甲骨に5センチくらいのひびが入っていたんです。

 それでも再試合がありますから、痛み止めの注射を試合開始の1時間くらい前に打ったら、肩が軽くなって投げられた。さすがに5回を過ぎたあたりからまた痛み出して、結局、最後まで投げたんですけど、試合には負けて......いま思えばむちゃくちゃな話ですけど、当時はそれが当たり前でした。

 高校を卒業して、青山学院大学に進みました。当時は東都の2部リーグでしたけど、3年の春に入れ替え戦で勝って1部へ上がることができました。でも、初めて1部で戦った3年秋、あとひとつ勝てばリーグ優勝というところまでいきながら、勝ち切れなかった。プリンスホテルでも地方大会では優勝するのに都市対抗には出られなくて ......私の場合、そういう野球人生でしたから、大きな舞台でプレーしたいという夢はずっと持っていたんです。

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