2020.03.18

ドラゴンズの名手は言った
「勝つためじゃない、かっこいいからです」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


 無表情にも確かな理由があったとは......。性格ではなく、ある意味、作られた表情だったのだ。

「ただね、プロだから、なんか派手な、ファンが喜ぶプレーをやりたいっていう気持ちがいつもあった。だから長嶋さんがうらやましかったです。あの人のオーバーパフォーマンスは、本来、そこまでする必要はないんだけど、かっこいいやないですか、見てたら。

 ファンの人は、それに惹きつけられたよね。だけども、あの人のプレーは真似できんから、じゃあ俺はまったく逆に、もう淡々と、こんなのはプロなら当たり前だよ、という顔でやったんです。バックトスをして、ファンがワーッと喜んでくれても、どしたの? それが何か? っていうね。ふっふっふ」

 かっこよさを求めて習得したプレーが決まり、スタンドのファンが沸いても、決して歓声には応えない。それは「あこがれの人」長嶋茂雄にあえて逆行して生まれたスタイルだった。高木さんとしては、プレーそのものでファンを喜ばせることができれば満足ということか。

「はい。常にそういうことですよ。一塁にランナー出たら、飛んでこい、来たらやるぞ、と思いながらね。そして、やると、ファンに喜んでもらえる。それがプレーするうえで、生きがいみたいなもんになってくる。歓声が聞こえたら、顔は無表情でも内心はうれしいですよ。

 ただ、セカンドは補助で動くのが多いから、バックトスよりも、一塁のカバーっていうのが、僕のプレーのなかではひとつ自慢できるものなんです。サードゴロ、ショートゴロで、ファーストのカバーに回って、絶対に二塁へ行かせない。で、これの究極の目標は、サードが暴投したら、それを後ろでダイレクトで捕る、っていうのね」

 想像してみると、「すごい」としか言いようがない動き。俊足なくしてできないだろう。