和田毅が今もマウンドに上がる理由。復活の支えとなった松坂大輔の姿 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 その後、右肩上がりに復活したわけではなかったが、去年の6月5日、交流戦で一軍のマウンドに戻り、23日には651日ぶりに白星を手にした。投げられなかった間、和田を支えていたのはいったいどんな想いだったのだろう。

「......そうですね、やっぱり(松坂)大輔の存在だったのかな。大輔がホークスにいた時、ずっと肩の痛みに苦しんで投げられなかった姿をすぐそばで見ていましたからね。彼は本当に苦しんでいたし、でもあきらめずにリハビリを続けていた。僕が投げられなかった2018年、あんなに苦しんでいた大輔がドラゴンズで復活して、一軍のマウンドで投げているところを見て、思ったんです。僕はまだ1年も頑張ってないじゃないか、このままちゃんとリハビリすれば自分もあの場に戻れるかもしれないって......同級生が、それも僕たちの世代を代表して引っ張ってきてくれた大輔が(あきらめない姿を)示してくれたことで、僕は励まされたんだと思います」

 和田の脳裏には、リハビリ中の松坂が垣間見せたあるシーンが焼きついている。それはキャッチボールをしていた松坂が、それを途中で打ち切った時のことだった。キャッチボールが好きで、投げたがりの松坂が、肩の状態が思わしくないせいでキャッチボールをやめた。その時の松坂の苦渋の表情が忘れられないのだという。

「投げることが大好きで、あれだけ痛みに強い大輔が、自分から投げるのをやめるというのは相当なことなんだろうなと思いました。僕は大輔には『肩はどうなの』って普通に話しかけていたんですけど、大輔は肩の状態がどんなに悪い時でも周りにそれを感じさせることはなかったんです。僕は彼が内心、苛立っていたのはわかりましたよ。でも、そんな時でもみんなに気を遣っていて、彼はいつも普段の松坂大輔だった。僕はそれがすごいと思いましたし、だから自分が同じ立場になった2018年、グラウンドのなかでは大輔のような立ち居振る舞いをしなくちゃいけないんだと自分に言い聞かせていました」

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