根尾昂が1年目に痛感したこと。2年目は「自分のスタイルを貫きたい」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 能力の高さは誰もが認めるうえに、ドラマ性も申し分ない。少年時代にはNPB12球団ジュニアトーナメントの中日ジュニアに選出され、小学生にして中日のユニホームを着た。中学時代にはスキー男子回転で全国優勝を果たし、両親は医師で自身も成績優秀、頭脳明晰。もし漫画の主人公にここまでの設定を盛り込んだら、「やりすぎ」と批判されるだろう。

 その一方で、根尾の類まれな思考力が「諸刃の剣」になっている可能性はないだろうか。事実、首脳陣からは「根尾は考えすぎている」という辛口評も耳にする。

 そこで、根尾に「1から10まで考えてからプレーに移すのですか?」と聞いてみると、意外な反応があった。

「あまり考えていないですよ。試合に向けて考えて準備はしますけど、いざ試合になったら一瞬のことなので、考えている時間もないですから」

 練習で考え、試合では無心。それが根尾の基本スタンスだという。根尾は「実戦中に考えてしまうと、頭に血がいってしまうので、体が動かなくなります」と、また独特な表現で語った。

 首脳陣から「考えすぎ」と見られることに対しては、「そうやって周りから見られているなら、僕が言うより正しいことだと思います。評価は周りが決めてくれることなので」と殊勝に受け止める。その受け答え自体が根尾のクレバーさの象徴のように感じられた。

 話を聞いた翌日、根尾は2打席連続三塁打を放って挽回した。与田監督のいう「修正」を1つクリアしたともいえる。

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