やらかしても前を向く。DeNA倉本寿彦はファン350人と握手した (5ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu


「僕1人の力ではここまで来ることができませんでした。両親や、学生時代、社会人での指導者、チームメイト。プロに入ってからもそうです。いろんな人たちの助けのおかげで今、ここにプロ野球選手として立っていられる。その恩を少しでも返していけたらという思いがずっとあるんです。一番の恩返しになることは、一軍の舞台で活躍することだというのもわかっています」

 後日、茅ヶ崎市役所を表敬訪問した倉本が今年の活躍を誓うと、茅ヶ崎市の佐藤光市長は、市をあげて倉本を応援することを約束。さらに「ベイスターズが優勝したら、茅ヶ崎で倉本選手のパレードをやりましょう」と、実現性はともかく、気持ちだけは十分に伝わる提案まで受けた。倉本も戸惑いながら思わずうなずいていたので、たぶんやるのだろう。

茅ヶ崎市長を表敬訪問。地元パレードは実現するか?(写真=タウンニュース)茅ヶ崎市長を表敬訪問。地元パレードは実現するか?(写真=タウンニュース)
 今年の秋。倉本はどんな実りを得ているのだろうか。

 ベイスターズはショートのレギュラーに大和がいて、柴田竜拓もいて、ドラフト1位ではショートの森敬斗が入団してきた。倉本の春季キャンプは二軍からスタートした。この2年間結果が出なかった現実がある以上、厳しい戦いになることは容易に想像できる。

「長く安定して活躍できる選手になれたらいいんですけどね。今年ダメだったら終わるかもしれないし、本当に勝負の年だなと感じています。これからも厳しい状況はあるでしょう。ただ、どんなことがあっても負けない選手でありたいです」

 倉本は絶望しない。前を向き続ければ、何度でもやり直せるのだ。自身が憧れ続けたプロ野球選手は、それができる存在だと信じてグラウンドに向かう。
                      

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