やらかしても前を向く。DeNA倉本寿彦はファン350人と握手した (3ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu


 オフになっても倉本は休まなかった。以前から気がかりだった身体の使い方を見直すために新たなトレーニングを取り入れ、根本から作り直すことに挑んだ。

「これまでは独学でやってきましたけど、一昨年ぐらいから1人で挑むには限界を感じるようになっていました。いろいろ試しましたが、自分の身体の感覚に合うものってなかなか難しいんですよ。それがやっと『いける』と思える方法を見つけて、今は身体の芯から動けている感覚があります。
 
 僕はもともと身体が硬いんです。その素地の上にトレーニングを積んできていましたから、本来できるはずの動きに制限がかかってしまったり、腰に痛みが出てバランスを崩してしまっていた。それらの原因がやっとわかった気がするんです」

 一昨年といえば17年。ショートとして石井琢朗以来のフルイニング出場を果たし、日本シリーズに出場した年だ。あの年、倉本の失策は目立つようになり、前年リーグ2位の.989だった守備率は.979と大きく数字を落としていた。

「前の年もエラーはしていたんですが、結果的にごまかせていた部分もあったと思うんです。問題はエラーの数とか率じゃない。17年はシーズン中から『ヤバい、このままじゃ行き詰まるかもしれない』という予感がありました。技術以前のコンディショニングの問題です。そこがよければ動きたいように動けるし、技術もついてくるんですが、その部分が動かなくなってしまうと、すべてダメになってしまう。

 なんとか改善できないかといろんな方法を試してみたんですが、どれも合わなくて。自分の身体が『違うな』という違和感があるまま迷いが出てしまい、実際に身体が動かなくなっていたように思います」

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