やらかしても前を向く。DeNA倉本寿彦はファン350人と握手した (2ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu


「いろんな声がありますし、一軍の試合にも出られていない状況なので、気持ち的にファンの人たちの前に出づらいなぁと思う時もあります。でもそこで一歩踏み出してみると、自分が思っている以上にファンの人たちが喜んでくれて、僕に『がんばれ』と声をかけてくれる。

 その言葉やファンの人の顔が、ひとりになって、いろいろと考えてしまう時にふとよぎるんです。プロ野球選手なら、がんばらなければいけない。最後まで前を向き続けなければいけないって、本当は僕のほうが何度も助けられているんです」

 19年。倉本は出場24試合、わずか4安打とプロ入り後ワーストの成績に終わった。

「悲しい、悔しいと嘆くよりも、自分の力で、周りを、世界を変えていくしかない。来年はすべての面において、それができるチャンスだと思っています」

 昨秋。倉本は2年ぶりに宮崎のフェニックスリーグに参加した。その最終週、打席に入った倉本のバットはヘッドを頭の後ろに入れないフォームに変わった。少しでもバットの出をスムーズにしてヒットを打ちたいという願望が見てとれた。

「フォームを変えたのは、自分の理想である、ヒットを数多く打ちたい、打率を残したいという考えに一番コンタクトできる形だからです。(細川)成也と話しているなかで試してみようと思い、実際いい感覚を掴めています。試合に出られなかったことで、必要なことは変えなければいけないけど、これまでやってきたことすべてを変える必要はない。自分の芯の部分だけはブレちゃいけないと思うんです」

 奄美での秋季キャンプでも調子の良さを持続していた。監督のラミレスは、「今の状態なら16年のキャリアハイを上回ることができるだろう」と手放しで絶賛したが、新シーズンへの確証は何ひとつとしてない。

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