野村克也に八重樫幸雄が感謝。ベテランへの気遣いと現役後のアドバイス (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

――ご自身も45歳まで現役を続けた野村さんだからこそ、ベテラン選手の心情をよく理解していたのかもしれないですね。

八重樫 確かにそうかもしれないね。「もう今さら何を言っても成長はしない」って思われていたのかもしれないけど(笑)、僕らベテラン勢にとっては何も不満のないやりやすい監督だった。そんな印象がノムさんにはありますね。

【「しゃべる練習をしろ」とアドバイスされた】

――野村監督がヤクルトに来る以前と、それ以降では、チーム内にはどのような変化がありましたか?

八重樫 ノムさん以前とノムさん以後では、チームの雰囲気がガラッと変わったよね。1年目の1990年は5位で、2年目の1991年に3位になったけど、この2年間の違いがすごく印象的なんだ。1年目のミーティングは人格形成というのか、人間教育というのか、とにかく「人間とは?」「人生とは?」という精神面の話が多かった。だけど、それを踏まえて、2年目になると具体的な戦術に入っていって、少しずつ少しずつチームが強くなっていった気がする。

――当時ベテランだった八重樫さんにとっては、現役晩年にまた新たな野球観が植えつけられたような感じなんですか?

八重樫 そうだね。まったく新しい価値観だったな。結果的に、そのおかげで僕は42歳まで現役を続けられたと思う。それまで培った技術と経験に加えて、ベテランになってから頭を使うことを覚えて、それで結果的に選手寿命が延びた。それがなかったら、体力の衰えとともにもっと早く引退していたはずだから。

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